はじめに


 1995年1月17日、あの日私たちはビンのリサイクル業にたずさわって いる方と逢うことになっていました。それまでの1年間、ガラスビンのリサイク ルというテーマでいろいろ調査し、あの日が仕上げの日となっていました。
 悪魔のような地震は私達8人の家にもそれぞれしっかりと爪痕をたてて去り ました。わずか20秒(11秒、14秒、21秒などさまざま)の間にこれだけ の業をやってのける怪物が地球上にあったことを私たちは認識していませんでし た。ガラスビンのリサイクルなどというテーマは吹き飛んで、私たちは都市まる ごとのがれきを積もらせてしまいました。多くの人が愛用の品々をがれきとして 、あるいは灰として失いました。
 奪われた6千を越える人の命をとり返すことが出来ない悔しさ、それは、ど んなに月日を重ねても消せるものではありません。それどころか、家族を失った 人々の悲しみは、日を追うほどに、堪え難くなるのではないかと恐れさえ感じま す。
 震災のすぐ後から始まった私達お互いの安否の確認は混乱の中で数日を費や しましたが、4か月後、神戸クリスタルタワーに揃うことが出来ました。
 爪先に伝わる小さな振動にも、青ざめるほど、その時はまだ余震のおびえを 引きずっての集まりでした。
 おしゃべりの中で、あの20秒は住まいだけでなく、みんなの心もむしばん でいる事に気付きました。それからは月に一回、近況報告の形で時間を作り、地 震の本の回し読み、講演会への出席など、今回の地震を知ることに、あえて努め ました。
 そして、あの日から1年目の1月16日、痛手をいやす試みとして、ひとり ひとりの20秒を集めてみることにしました。範囲をメンバーの知り合いまで少 し広げ、記録しやすいようにアンケートの形にしました。60代が多いのは、集 めたメンバーの偏りによります。亡くなられたご家族のある方は避けました。
 地震に備えるため、いえ、地震に敗けないため、地震という暴れ小僧の手口 の推理に、この記録が役立てばうれしく思います。



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