ボランティア・マニュアル

          山本 六三 二十八歳 美術館職員  静岡市

 これは、神戸市中央区にある旧下山手小学校避難所における二月四日現在(地震後十九日目)のボランティア用運営マニュアルである。ボランティアとして、積極的に活動するというより、避難住民の自立へ向けての活動へ移行していく時期であった。
 初めに、この旧下山手小学校避難所の概要について説明することにする。平成六年三月に廃校となったため、教師はいない。よって、避難所運営は、住民とボランティアが行っている。また、授業再開の心配がないので、長期の避難所生活に耐えうる運営が必要である。住民は、二十一の教室に約三百三十人、グラウンドのテント等に約二十人、ボランティア三〜六人が一緒に生活していて、他に、区役所職員が半日交替で一、二名配備され、和歌山医大のチームが常時診療を行っている。ライフラインは電気、電話が復旧していたが、水道、ガスはまだである。
 共同作業については、住民の中から、食糧、物資、夜警、清掃、ごみの責任者及び副責任者を各一名選出し、さらに総責任者が決定していた。トイレについては、部屋当番制になっていて、一日 交替で、給水、紙の補充、清掃、監視を行っている。
 これらの状況から、ボランティア運営マニュアルの柱として、以下の四点を設定した。
一、住民が自立しかけているので、あくまでその手伝いをすること。
二、救援物資は住民のものなので、要求があれば、必ず渡すこと。
三、役に立ちそうなアイディアを実行し、生活環境を日々改善すること。
四、住民には笑顔で接し、明るい雰囲気をつくること。

 また、個々のケースについてのボランティアの対応は、以下のとおりである。
一、電話の呼び出し
  五十音順名簿で確認後、電話を切り、同室の人にメモを渡して、別の電話からかけ直してもら   う。これは、本線を受け専用にし、必要な情報が入りやすくするためである。
二、人捜し、安否確認
  本部横の壁に貼ってある部屋別名簿で捜してもらう。なければ本部内の五十音順名簿で調べ、そ   れでもなければ付近の避難所地図を渡す。
三、新規入居者
  五十音順名簿と部屋別名簿に住所、氏名を記入してもらい、毛布三枚渡して図書室(二月四日現在)に案内する。
  ボランティアも同様である。
四、食事の配給
  朝七時半、昼十二時、夕五時半を目安に配給する。
  在庫数、賞味期限、栄養バランス等を考慮し、食糧係と相談してメニューを決める。
  メニューを黒板に書く。
  食糧係とボランティアが配布にあたる。
  部屋単位で取りにきてもらえるよう、放送する。例「おはようございます。朝食の準備  ができましたので、部屋ごとに取りに来てください」
  部屋名と人数を記録し、配給する。
五、給水方法(一日一トン〜二トン)
  給水車を誘導する。
  一台につき一トンなので、ポリタンク五十個を用意する。
  水道局等の人とともに給水を手伝う。
  一日おきにポリタンクの色(黒とグレー)を替えて区別する。
六、物資の保管と渡し方
  菓子及び日用品は、一種類につき段ボール二箱分を階段に並べ、少しずつ自由に取ってもらう。不足分は倉庫から補充する。
  衣類は倉庫に保管し、量が増えてから、物資係と相談して、部屋ごとに分ける。
七、炊き出し
  材料がそろったら、放送で料理をしてくれる方を集める。放送例、明るく「料理の好きな方、味にうるさい方、炊き出し場に集まってください」
  あくまで住民主体にしたいので、気分を盛り上げる。
  作りはじめたら、下がって見守る。
八、薪、廃材の確保
  二、三日に一回、周辺のマンションの大家の許可を取って、もらいに行く。
九、水の使い方
  給水車の水は沸かして飲む。生活用。
  池の水はトイレの流し、手洗い用。
  ミネラルウォーターでは薬を飲む。
十、物資の搬入
  他の作業中であっても応援に行く。種類と数をチェックし、倉庫へ運ぶ。納品書は区役所職員に渡す。
 ただし、住民とトラブルにならないようにすることが大切なので、このマニュアルにかかわらず臨機応変に対応すること。


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