ニワトリ小屋

          木村 修司 四十一歳 小学校教諭  西宮市上甲子園

 大震災から半年が過ぎた。私の勤務する学校の体育館におられた避難者の方々も、それぞれの住居に移動し、今では体育館も本来の機能を発揮し始めている。
 私の学校では校舎のほとんどが全壊し、仮設校舎で授業をしている。運動場に建てられている為に、当然運動場は狭くなり、体育種目の選択や日常の遊びにも大きな影響を与えている。狭い運動場では二つの学年の体育授業は難しく、放課後の遊びは禁止となった。
 新校舎建築工事が三年計画で始まった。コンクリートを砕く猛烈な騒音は、プレハブの校舎の壁を遠慮なく貫き、大声の授業となってしまう。
 また、工事車両や資材置場のために、この春に植えたヘチマ園もつぶされてしまった。更に車両出入口にあるウサギとニワトリ小屋では、半数がこの半年で死んでしまった。外傷のないストレスが死因であった。
 地震後、残ったニワトリの一羽が、自分の卵をふ化しヒヨコをかえした。子供達は、それを「ヒヨコの自然誕生」と名づけ、本校始まって以来のすごい出来事だと人気が高かった。しかし、そのヒヨコも、ストレスで気の立ったニワトリにつつかれて死んでしまった。
 子供達を取り巻く環境の悪化や、半年という時間の経過は、子供達にどのような影響を与えているのか。それを調べるためにアンケート調査を実施した。
 結果を見てみると、「地震の夢や怖い夢をみて、うなされることがある」「集中力がなく、勉強にも集中できない」「小さな音にも激しく驚く」「そわそわして落ち着きがない」「爪をかむ」といったストレスが原因の症状が多いということがよくわかる。
 今度の大震災は、直後の視覚的な衝撃だけでなく、このような心理的な衝撃を子供達に与えているのである。しかも、それは今なお続いている。
 「いつまで続くのであろうか」「はたしてそれは、回復できるのだろうか」。この疑問をいつもつきつけられている。と同時に、「今年で終わらせてみせる」「温かい心のふれあいを通して、必ず回復させてみせる」と決意する毎日である。


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