通帳とにらめっこ

青木 加代子 五十七歳 飲食店経営  西宮市


 前略

被災された皆様お元気でお過ごしでしょうか。

阪神淡路大震災からもうすぐ十年、振り返ってみれば、震災のために借り入れをした返済のやりくりにいつも四苦八苦の毎日でした。よくまあ今日まで返済を続けてこられたことと、われながら感心します。

しかし、ここ一年程前より返済額はピークに達しています。しかも、それに反比例する店の売上。返済の引き落としが一ヵ月に何回もあるので、毎日通帳を眺めています。

そして、やっと災害援護資金の返済はあと残り二回となりました(平成十六年九月末現在)。

全壊の家の建て直しの資金、店の再建の資金、借りることができるすべてを借りて再建しました。

その重荷は大変なものです。住宅ローンは夫が七十四歳まで続きます。

国民年金は、震災後の所得が激減したので毎年更新をして、五年間「全額免除」申請をしました。したがって、年金をもらえる年齢になったときには、三分の一しか給付されない期間が五年間あります。それでなくても国民年金の支給額は少ないのに。皆様は掛けられていますでしょうか。

生命保険の解約もしました。そして最後に残っていた生命保険の解約の手続きを今日(平成十六年九月三十日)してきました。今まで掛けてきた金額の累計より、受け取る金額は一六〇万円近く少なくなります。

こんなはずではなかった。自営業は病気、事故で商売ができなくなると大変なので、そのときのために掛けたはずの生命保険です。

地震のために思いもかけないことが次から次へと続きます。愚痴を言うまい、後を振り返るまい、前だけ向いて頑張るしかないと思ってはいても、二重ローンと店舗全壊の負担は重くのしかかり、いつまでもいつまでも続きます。

娘が生まれたときに始めたこの商売を、二十四年間一生懸命続けてきましたが、来年の春には商売を換えるつもりです。夫は定休日もいつもどおり朝早くから店に行き、次にする商売のことを考え試行錯誤をくり返しています。

休みの日ぐらいゆっくりしたらと言うと、決まって「死んだらいやでもゆっくり寝られる」が口癖の夫。感心するくらい前向きの夫。生涯現役を目指している夫。

住宅ローンの完済まであと十六年、まだまだやる気満々で働くことができます。先の不安ばかり考えていても仕方ありません。

だからエーイなんとかなるさ。

ただこの災害の多い国、今年の夏は集中豪雨による災害の多かったこと、被災された方も多く、それにともなう再建のための借入金は大変であろうと察します。

被災された中小零細業者がすみやかに事業を再開できるように、長期で、無利子、無担保で融資を受ける制度が欲しいものです。

それと、いつ自分の身にふりかかるかわからない災害のために、国民全員がかける共済制度も是非実現して欲しいものです。

二重ローンはあまりに悲惨です。私達のような、いやそれ以上の負担を背負っておられる方も多いと思います。

病気をせず、事故に遭わず、元気に毎日働き続けられるように祈るのみです。

皆様も体に気をつけて生活を続けてください。

草々

 

(注)筆者の手記は、第二〜四巻にも掲載されています。